人気ブログランキング | 話題のタグを見る


Top

名前を変えてみました。(何となく)
by hat__trick
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
ファイルNo.0136「清香島」・解決編幕開け
ファイルNo.0136「清香島」・事件編の方をお先にお読み下さいっす。さもないと、わけわかめっす。

それでは、ジュブナイル小説もどき、だけれど、PG13。

出てくる名前、建物、全て架空のフィクション文章っすから、本気にしないで下さい。では、始まりー。




私は、シクラが身悶えている横で、ぼんやりと、これはどう言うことなのか考えてしまった。

しかし、身悶えしている“だけ”かと思ったシクラも、実は、考えていたらしい。

「人間消失ですよぅ~!みーんなどこに消えちゃったんですかねぇ!もしかして、天国ですかぁ!それとも、パンデモニウムって言うくらいですから、地獄とかぁ~!」

これもまた、とっても嬉しそうだ。

私とシクラを除く他の人々、つまり、島内の全ての人々は、一体何処に消えてしまったのか?シクラの言うとおりに、ホテルに名づけられた、このパンデモニウムと言う言葉は、ギリシア語で『デーモンの全て』と言う意味を表す言葉に由来するラテン語だ。デーモンとやらに食い殺されたといわれても、何だか、納得出来てしまう様な異様な名前であることは確かだった。

「・・兎に角、君と私で出来ることをしよう」

私は、未だに嬉しそうに身悶えしているシクラの肩に手を置いて落ち着かせようとした。

「はいぃぃ!!ムロダさぁん!そうしましょう!」

やけに和やかな笑顔をくれてくれる。シクラには、嬉しいことばかりの連続の旅らしいが、私は災難続きだ。着てきた服は似合わないし、私たち以外の人々は、消えて居なくなるし。これは、シクラに運を全て持っていかれているとしか思えない。今度からは、是非とも別行動したいものだ・・・。・・・いや、それは出来ないか・・・。シクラの面倒を見る者が居ないと、世界が破滅しかねない。これは、存亡の危機と言うやつだ。それはいけない。

私は、重くなった頭を1回振ると、シクラと共に、もう一度だけ島の中を見て回ることにした。

以下が調査結果である。

★やはり、人っ子一人居ない。今現在、島に居るのは、私とシクラのみである。

「あはははっ!!やっぱり、私たちだけでしたねぇ~!人間消失だぁ!!やったぁ!!」

「・・・何がやったなんだ?まあ、良い。これも楽しいアトラクションの一部だと思えば、楽しい春の思い出になるしね」

「そうですよぅ~!ムロダさんなら、直ぐに、この謎を解いてくれますしねぇ~!期待しちゃいますよぅ~!」

「・・直ぐにねぇ・・・」

私は、少し頭を抱え込んでいたのだが、とりあえずそんな雰囲気は微塵も見せずに、シクラの言葉に相槌を打っておいた。

シクラは、探偵を気取っているのか、部屋の回りをグルグルと回りながら、人差し指で顎の部分をポンポンと叩き始めると、何やら考え始めた様だ。

「まず最初にですねぇ~、人間消失と、踊る幽霊が関係あるかってことですようねぇ~」

「・・・現時点じゃ、何も言えないから、それは保留」

「早速ですかぁ!」

「・・・・仕方ないだろ、こっちには、何のバックグラウンドもないんだからね。昨日の今日で、全ての裏事情知ってるのは、“出来すぎた”探偵くらいだよ」

「はぁ~、そうですかぁ~?ムロダさんも、そんな“出来すぎた”探偵だったら、解決も早かったんですかねぇ~?」

「・そりゃそうだ。瞬殺に決まってる。けど生憎私は、“普通”だからね。残念?」

「いえいえ~!いくら“普通”でも、私は、“ムロダさんだから”、一緒に何時も居るんじゃないですかぁ~!ムロダさんのお陰で、何度命を救われたかぁ~、正直数えられないですものぅ~!」

「・・・その代わり、私も十分に死にかけたけどね・・・。まあ、その話は、また後ですることにして、最初は、踊る幽霊のことに焦点を合わそう」

「はいぃぃぃ!」

シクラは、手をピシッと打ち上げた。

「・・・まず、踊る幽霊の件から。最初に、踊る幽霊の存在を信じるか?これは、重要」

「うーん、難しいぃぃ!究極の2択ってやつですねぇ~!それじゃあ、信じるに、全身全霊ぃぃぃ!!」

「私は、信じないよ」

「あれぇぇぇぇ!!それだったら、最初から聞かないで下さいよっ!」

「・・聞くことが重要なのさ。答えは、重要じゃない。兎に角私は、躍る幽霊の存在は信じない。だから、幽霊は誰か、“生きている人間”がやったに違いないと考えてる」

「はいぃぃぃ・・・、それでムロダさん的には、どんな感じで、あの踊る幽霊を作ったと考えてるんですかぁ~?」

考えは、未だに煮え切らないのだが、この際出し渋っても仕方ない。
あまりにも選択肢が無さ過ぎる。次々に口に出していかないと、何故だか話が進まない気がするのだ。

私は、一口空気を吸い込むと、考えを口に出す。

「3D」

「えぇぇぇぇ!?3Dっすか!?」

「・・・何か不満でも?」

「3Dって、立体に映像が見えるやつですよねぇ!この前ユニバーサルスタジオに行って、楽し
んだ、あれですよねぇ?・・・不満なんてないですけどねぇ。ただ、そんなんじゃ、直ぐにバレちゃわないですかぁ~?だって、3Dって、メガネっぽいのかけないと、その効果が出ないじゃないですかぁ!幽霊を見た時、そんなのムロダさんも、私もかけてなかったですよぅ!ムロダさんがいくら“普通”の人でも、それはないですよぅ~!」

「メガネをかけなくても、巨大なフィルターが目の前に広げられていたら同じだろ。君と私が、あの幽霊を見たのは勿論、夜。このパンデモニウムは、“やけに”薄暗かったし、尚且つ、君と私が幽霊とやらを見たのは、2階からだった。私たちは、幽霊を見てすぐ、1階に行こうとしたけれど、何故だか私たちの居た2階から、簡単に1階に降りることが“出来なかった”からね。黒いフィルターがあるかないかなんて、分からないじゃないか」

「うぅぅぅぅーん」

シクラは、これ以上に困惑出来ないくらいの困惑顔になると、眉間に皺を寄せてもがき苦しんでいる様だ。とことん、忙しい奴。

「それじゃぁぁぁ、ムロダさんは、犯人が、その3Dとやらを使って、私たちに幽霊が踊っているかの様に見せたと言いたいんですかぁ~?」

「その通り。犯人は、プロジェクターか何かをフィルターの前に設置して、映像を壁か何かに映し出し、その映し出された映像を、君と私が、巨大なフィルターを通して見た。そして、その立体的な画像を見て、私たちが“本物”の幽霊だと思うと思ったんだろうな」

「なるほど!ムロダさん、“普通”の人なのに、凄いこと考えますねぇぇ!いよぅ、ムロダさんっ!尊敬ぃ!」

しかし、興奮しきったシクラには悪いのだが、私は、残念なことを言わなければならない。

「・・・と思ったんだけど、どうやら、その線は、難しいみたいなんだよな」

「えぇぇぇぇ!!!ここに来てですかぁぁぁ!?今までのは、一体何だったんですかぁ!?」

もうないだろうと思った驚きが、もう1度奇襲してやってきたので、更に驚きの声を上げるシクラ。この位驚いてくれると、何故だか、すがすがしさすら感じてくるから不思議だ。

私は、ポキポキと指を鳴らすと、もう一度頭の中の情報を整理しようとした。

「・・・さっき言った様に、夜の時点ではとてもじゃないけれど、1階に下りるのは難しかった。階段もすぐ近くにあるわけでもなかったし、とても薄暗かったし、それになにより、直ぐにでも駆けつけなきゃならない衝動にもかられなかった、何故だかあの時、むしょうに眠気が押し寄せてきて、体が重く感じたんだよな。まったく、早起きはするもんじゃないね。遅寝遅起きが私には、一番だって思うよ」

私がしみじみと感想を漏らすと、シクラも、

「・・・そうなんですよねぇ。私も見た時は、ドキドキして今直ぐにでも駆けつけたい気持ちだったんですけどねぇ、何故だか、むしょうに眠かったですよねぇ。幽霊消えたら、ベッドに直行して、即行寝ちまいましたもんねっ!常日頃の夜更かしの賜物ぅ!」

「そうそう。それだから、今日改めて、その1階の部分に行ってみたけど、それらしい仕掛けも、それを片付けた後も、一切ない。床には、しっかり均等に埃が被ってたからさ。どうしたもんかなーっと」

「でも変ですよねぇ。仮にもホテルなのに、床に埃だなんてぇ~、綺麗にしてないんですかねぇ~。このホテルは、怠慢さんなんですかぁぁ!?」

今度は、“プンプン”と言う言葉が相応しい様にシクラは、口をへの字にしている様。可愛いって言ったら、可愛いのかもしれないけれど、私には、似合わないな。

「・・・怠慢か否かは後で決めるとして、これじゃあ、この幽霊の件も保留だなー」

「うむむむむむー!!それじゃあ!!ムロダさんが踊る幽霊見た時に、“止まったらまずい”って言ってましたけどぅ、それは何故なんですかぁぁ!私、気になって眠れなかったんですよぅ!」

「嘘付け。さっき、君、即行寝たって言ってただろう」

「・・・あははは。そこは、ご愛嬌ですよぅ!それで、そこの辺りはどうなんですかぁ!」

舌をペロりと出すと、シクラは、上目使いをする。懇願する様な眼差しと言うやつか。正直、シクラの上目使いは似合っていないので、すぐにでも止めて欲しくて、すぐさま応えることにした。

「動いた方が、“それっぽい”し、“すぐに”分かるじゃないか。ただでさえ、薄暗いからね、ただぼんやりと現れたって、見過ごされる危険もあるしさ。“踊る”って言う修飾語があった方が、記憶にも残りやすいし、それか、踊っている方が、曰くありげな感じがするってのもあるな」

「・・・それだけですかぁぁ!?」

「・・・ああ、それだけさ。何を期待してるんだ君は。小説なんかみたいな“衝撃的”な理由でもあるとでも思ったの?だとしたら、小説の読みすぎだよ。もう少し、現実世界に戻ってきた方がいいかもね。そう言う風に回りくどいことばかり考えるから、簡単なことにも気付かないで、とても単純な事実すらも、『謎だ!!!事件だ!!!密室だ!!!消失だ!!!不可能犯罪だ!!』なんて騒ぎ立てる輩が出てくるんだから。現実は、思うより単純なものだってことだね」

「・・・ははは・・・。ムロダさん、やけに挑発的な発言ですねぇ!!探偵さん達とか、ミステリファン達に、そのうち、殺されちゃいますよぅぅぅ!」

「大丈夫、その時は君も一緒だからね」

「・・・なんでですか!!死ぬなら、一人で死んでくださいよぅ!道連れ反対!」

「・・・まあ、冗談はさておき、踊る幽霊の件が行き詰った以上、次の件にいこう」

「・・・まったく、どこまで冗談なのか分かりませんけどぅ、次の件にいくのは賛成ですよぅ!次こそ、きちんと解決してくれるんですよねぇぇぇ、ムロダさんっ!!」

「人任せにしないで、君も勿論、考えてくれ。時々君の“ドキリ”とした一言が、私の発想にアイディアをブチ込んでくれることもあるからさ」

「本当ですか!?うむむむ、それじゃあ、頑張らないといけないですねぇ!それじゃあ、私も、ムロダさんに微力ながらお力をお貸ししますともぅ!」

フンと鼻息荒くヤル気満々のシクラは、次々に考えを提供していく。
勿論殆どは、一見役に立たないクズ情報や考えばかりだ。
例えば、兎に角、ここは良い所だの、コックのタナベが作った夕食は、自分の舌には合わないだの、極めつけは、トムソーヤになった気分だののだ。

「・・・それだけかな?君の言いたいことは?」

私は、シクラがとりあえず全部言い切ったところで、目元に血管を浮き立たせながら、これでも冷静に、満足げなシクラに質問してみた。

「いえいえっ!まだまだありますともっ!これでもまだ、10分の1くらいしか言ってませんっ!」

「!?」

「えっとーですねぇ~」

「・・・ま、ま、待て。まだ何かあるのか?」

怒りを通り越して、何故だか、疲れを感じる。私は、何か激しい運動をしている錯覚を感じてしまったので、更に口をあけようとしたシクラに待ったをかけ様とするも時既に遅し。

「はいっ!まだムロダさんの推理のために提供出来る情報は、沢山ありますよぅ!安心して下さいっ!!例えば、玄関から日の出が見えるっす!」

「!?」

「変なんですよねぇ~、昨日清香島に来た時は、確か玄関側で日の入りを見たと思ったんですけれどぅ、今日は、何故だか玄関から日が上がっているみたいですしー。どうなってるんでしょう?」

「・・・今から、それ、確認しに行こう」

「えぇぇぇ!?今からですか!?もう、外真っ暗ですよぅ!」

シクラが言う様に、外は真っ暗闇の夜となっていた。島内を2回も見回っていたら、1日と言う時間は、簡単に飛んで言ってしまったのだ。私が、腕の時計を見ると、今の時間は、夜の8時だった。

この一連の奇怪な事件について話し合っていたシクラと私は、パンデモニウムで割り当てられた部屋から、部屋に備え付けて合ったライトを持って、真っ暗闇の中へと駆け出していた。


「館の裏に背中を向けて、右に改築中の一棟。そして、左に3人の男女が住んでいる一棟だったよね?」

「はい、そうっすよう!昨日、一生懸命調査したですもんねぇ!」

「・・・うーん」

「そして、館の裏から、一直線上に穢香島(あいかじま)っすよね。事前の調査によると、穢香島は無人の島で、かれこれ50年ほど、公式的には、誰もあの島には行ってない様ですよぅ。よっぽど変な事件でもあったんですかねぇ?皆行きたがらないなんてぇ。私だったら、即行駆けつけちゃうのにっ!」

「・・・君ならそうかもね・・・。疑いようがないよ。しかし、昨日の調査通りの配置だな、全て・・・」

私は、ひとつため息をつくと、更にシクラに話を聞いてみることにした。

「他に気付いたことは?」

「うーんと、ご飯が好みじゃなかったのと、日の入りの位置が違うのと、他にはー、寝ている間に
どうやら、何処かに体を打ちつけたみたいで、青タンが出来てたみたいですっ!今頃気付きました!めちゃ痛めですっ!」

そう言うとシクラは、腕の裏側と足の裏側を見せた。 見事な青タンが薄っすらと白い肌に出来上がっていた。

そしてどうやら、私もシクラ同様に体を調べてみると同じところに、青タンが出来ている様だった。気付いてみると、ヒリヒリと痛い感じがしてくる。シクラと同じ様に体に青タンか・・・。

しかし、私が自分の体のことを気にしていると、突然、

「・・・実は、お尻の方も微妙に痛いんですよぅ!ムロダさん見てくださいぃ!」

と叫ぶと、シクラはパンツを脱ごうとしているじゃないか!私は、慣れて居るとは言え、突然のシクラの奇行に心拍数が一気に上がってしまった。

「・・・おいおい!そんなのこと出来るかぁ!もう少し恥じらいってもんを身に着けてくれ!」

私は、もう少しでパンツを下げるところのシクラの手を押しとどめると、心拍数を元に戻すために、深く息を吸い込んだ。こんなことが続いたら、きっと何時か、シクラの奇行で死ぬ日も近いんじゃないかと思い始めてくる。

シクラのおもりは、簡単にはいかないことを改めて実感する。どうにかならないかな、これ。

私がそんなことを考えながら、深呼吸をしている間、シクラは一言も発しなかった。そんなに晒したかったのだろうか?こっちは、そんなの望んじゃいないが。

何度か深呼吸をすると、通常時の心拍数に落ち着いたので、固まりつつある考えを整理し、ある疑問をシクラにしてみることにした。

「・・・青タンのことは、興味深いことは確かだけど、ちょっと置いといて・・・。穢香島と清香島って言うのは、同じ形をしてるの?」

「えーっと、まさかムロダさん穢香島と清香島が入れ替わっているとか言い出すんじゃないでしょうねぇ!“普通”のムロダさんでも、まさか、そんなことをっ!!」

さっきまでの奇行のことを一切忘れてしまったのか、私の疑問の声を遮る様に声を張り上げるシクラ。どこからそんな力が出てくるのか、こっちの方が謎。

「・・・どうなの?」

私は、目元に筋を浮かせながら続ける。

「・・・図星ってやつですかぁぁ!でも、残念でしたっ!穢香島は、清香島に似ても似つかない四角っぽい島なんですよぅ!もう、“これでもか!”って勢いで四角なんです!いよぅ!自然の驚異ぃぃ!神さん、よくやりましたっ!」

シクラは得意気に胸元から、事前に行った調査を詳細に記した手帳を取り出し、私の考えていた考えを一気に打ち砕いた。

まあ、常にシクラはこんな感じなのだけれど。折角考えていたことを瞬殺された今回ばかりは、ムカっ腹かな。

「・・・黙ってくれる?ちょっと耳に響くから。・・・まあ、君の言う様に、本当に四角なら、この島を歩き回って居る時にでも気付くはずか・・・。でもな・・・。合っていると思ったんだけど・・・」

こう言う混乱している時にこそ、冷静になって考えをまとめる必要がある。
私は、もう1回だけ頭を振ると、今まで分かっていることを確認してみることにした。

「まず、踊る幽霊の件だけど、未だに謎だな。道具を使った様子が微塵もないし」

「それじゃあ、本当に幽霊だったんですよぅ!ムロダさんも、幽霊の存在を信じましょう!」

「・・・誤解してもらっちゃ困るよ。幽霊の存在を信じないとは、私は一言も言っちゃいないだろ。ただ、今回の“踊る幽霊”ってやつを信じてないのさ」

「はあぁぁ。それじゃあ、その踊る幽霊の存在を信じましょう!」

「いや、あれは絶対作りもんさ」

「また、何を根拠にっ!」

「勘さ。それ以上でも、それ以下でもないな」

「出たっ!ズバリ“勘”!」

「・・・兎に角、君が何と言おうと、勘さ。経験を基にしたね。ただ、トリックはなんとなく分かっても、その証拠がないから、勘としかいい様がないだけの話さ。まあ、幽霊の件は、そこまで拘泥しなければならない話でもないだろうから、次の件。人間消失の件だな」

私たちは、暗い館の裏から館の中へと帰りながら、考えを整理始めた。

「君の言うことが正しければ、こうだな」


今分かっている事実

★昨日と今日で、日の入りを見た方向がどうやら違う

★踊る幽霊を見た1階の部分には、何かを移動した様子や、何かが隠されている様子がない。床は、埃が薄っすらと覆っている

★清香島の近くには、穢香島と言う名の島がある。しかし、その島の形は、清香島の様な丸いものではなく、四角い形をしている

★体中に青タンが出来ている。シクラのお尻にも、どうやら青タンが出来ている様子

★昨日の夕飯の飯の味が、シクラの好みではなかった

★シクラは、只今トムソーヤ気分

「・・・こんな感じかな」

「そうっすねっ!」

にっこりと笑顔を作ると、シクラは、嬉しそうにもう一度、身悶えた。
何故だか、気持ち悪い。

私は気を取り直し、現時点で分かっていることを、紙に書き起こした紙をじっくりと見直した。後ろの方になってくればなるほど、どうでもいい様な感じがしてくるが、その点は、とりあえず無視しておくこととした。

私は、自分の目で、この島の位置関係を知るために、シクラに地図の有無をたずねてみた。

「ところで、君は、ここら辺の地図を持っていたりするのかな?」

「・・・あ、勿論ですともぅ!それは、調査には、必衰アイテムっすからねぇ!」

シクラは、ガサゴソと床の上に放置されていたカバンの中身をかき回すと、ぐしゃぐしゃになった地図を取り出した。

「はい、これですねっ!」

これまた満面の笑みだ。しかし、私は持ち出された地図を見た瞬間に、体が硬直してしまった。

「これは・・・」

私が驚きの声を上げると、シクラは、何事か面白いことでも起こったのかと、うずうずと体をくねらせた。だから、それが気持ち悪いのに。

「ムロダさぁーん、何ですか!?何か、重要なことでも、分かってしまったのですかぁ!!」

シクラは、私のことなんかお構いなしに、体をくねらせる。
私は、短い髪をかきむしる程に動揺してしまい、一瞬我を忘れて、応えるのが少し遅れてしまった。 しかし、ぐちゃぐちゃになった頭の中を、すぐに切り替える。

「・・・ああ、十分すぎる程にねっ!」

私は、自分でも驚くほどに大きな声で叫んでしまう。けれど、今回ばかりは、そんなことには構っていられない。そしてシクラも、私の叫びに同調する様に、

「何ですってぇー!な、な、何なんですかぁ!!」

と絶叫する。咽喉の奥まで見えそうだ。
私は、未だに高鳴る鼓動で、

「・・・これを見てみろよ」

「・・・はい、見てみましたぁ!そんでもって、何も分かりませんっ!」

「・・・やけに早い回答だな。まあ、良い。この島だよ」

私は、左から清香島、穢香島、そして、2つの島の隣にぽちっとある島を指差した。

「ああ、このちっこい丸い島っすねぇ!」

「そうだ、この澄香島(ちょうかじま)だな」

「それがどうかしたんですか!」

「・・・こんなにヒントを言っているのに分からないの!?君は!」

「あは、すみませんっ、私“普通”以下なんでぇ!ムロダさんは、知って居るかと思ったんですけどねぇ」

「・・・ああ、十分に知っていたな・・・。ただちょっと忘れてただけだよ。兎に角、この澄香島を見てみてくれよ。この澄香島と清香島、形が同じじゃないか?」

「・・・えぇぇぇぇ!?また、なんてことをっ!確かに、形は同じですけど!」

「・・・この形と言い、まさに、澄香島は、清香島のミニチュアと言っても過言じゃない。そして、“まるで清香島の様に”私たちが今居るこの島は、丸い」

「・・・えぇぇぇ!?まさか、さっきの話ぶりかえして、この島、清香島じゃないとでも言いたいんですか!?・・・でも、それと人間消失事件と何の関係が?」

シクラは、もう“何でもこい”と言う様に、どっかりと部屋付属の椅子に座り込むと、私の発言を待った。

私も、シクラの様に居住まいを正し、どっかりと椅子に座り込む。

「・・・まさに消失したのは、私たち以外の人間ではなくて、“私たち自身”だったって言う簡単なことさ」

「!!!!???」

どうやら、シクラは混乱の極みにある様だ。
# by hat__trick | 2005-03-31 02:56 | 事件
ファイルNo.0136「清香島」・解決編終幕そして、驚愕の事件編
ファイルNo.0136「清香島」・解決編幕開け

      『ファイルNo.0136「清香島」・解決編終幕、そして、驚愕の事件編』

「そう考えると簡単なんだな。館の裏側から反対側に穢香島とされる島が見えるものの、昨日は、玄関の方から日の入りが、今日は玄関から日が出たらしいこと。オカシナ味の飯のこと。そして、踊る幽霊のトリックは把握出来るのに、その痕跡を見せない館。寝相だけでは、どうにも説明出来ない“お尻”の青タン。そして、今頃思い出したんだが、ヘリポートのところの砂が、円形に吹き飛んでいたこと。これを全部まとめると、ここは、清香島じゃない可能が出てくる。まあ、さっきは、てっきり穢香島に来ているかと思ったんだけど、どうやらその線は、穢香島の形から言って無い様だったから、あきらめかけたんだよね。 けど、澄香島と言う清香島に似た島があるじゃないか。全ての情報を合わせると、今私たちは、清香島ではなく澄香島にいる可能性がある」

「つまり、瓜二つな偽パンデモニウムホテルのある澄香島に、私とムロダさんは、夕食に盛られた薬でぐっすり睡眠中にヘリで連れてこられてしまったのですねぇ!!!ヘリで運ばれる最中に、体をぶつけられて、青タンが出来たとぅ!そして、踊る幽霊の仕掛けも、仕掛けを使用された清香島じゃないから、見つからなかったとぅ!」

「・・・おお、そうだね。今回は、都合よく飲み込みが早いね。そして君自身も感じていた、“トムソーヤ気分”。まさに私たちは、トムソーヤの様に漂流じゃあないが、無人島に来ていたと言うわけさ。まあ、生憎、澄香島から、本島にどうやって私たちを帰すつもりだったのかは、分からないけどね」
  
うんうんと私は、頭を振って応える。

「でも、何故私とムロダさんを消失させないといけなかったんでしょうかねぇ~?」

「それは、勿論、踊る幽霊の件に関わってくるんだろう。トリックは分かったとしても、そのトリックの証拠を見せることが出来なければ、ただの幽霊話で終わって、“踊る幽霊”の目撃証言で『恐るべき幽霊の館!』なんて言う歌い文句がパンデモニウムホテルにはついてしまう。そしてその結果、観光客が寄り付かなくなる。犯人はあまり人に、清香島に近づいてもらいたくなった様だ」

私がしんみりと考えを述べると、シクラは、私の話を聞いていたのか居なかったのか分からない風に、

「それじゃあ、何でも良いですから清香島“らしき”島に行ってみましょうよぅ!」

と能天気な声を上げた。私は、シクラの能天気さに、少しピクリと目元の血管を浮き立たせたものの、すぐに、気分を改めて、シクラの提案に賛同の声をあげた。

「・・・それもそうだな。明日の朝一にでも、館の後ろに見える島に行って、更にそこから見える島に行ってみれば良いさ。幸運にも、船舶免許を持っているし、鍵の方は、何処か探せばあるだろう。無かったら無かったで、ちょちょいとなだ」

「はい、ちょちょいとなっす!」


こうして、私とシクラはぐっすりと、今度こそ自然な勢いに任せて眠りに就き、そして、朝一で隣の島へと船を動かしたのだった。

そして案の序、その島は四角い形で、更にその島からは、大きな丸い形をした島が見えたのだ。そして、私たちがやってきた島を見てみると、形は似ているものの、少しだけ小ぶりな島がそこにあった。

私とシクラは、逸る気持ちを押さえ込み、昨日1日中、居るものだと思っていた清香島周辺の海に近づくと、船は着岸できなかったため、途中で船を打ち捨て、服を濡らしながら海の中を泳ぎ、やっとのことで清香島“らしい”島にたどり着いた。暖かい気候とは言え、少し肌寒かった。風邪をひきそうだ。少なくとも私は。

びちょびちょに濡れて重たくなった服を引きずりながら、私たちは、島に上陸した。

とりあえず、これまでの全工程、2時間程の旅だった。

私とシクラは、島に上陸すると、まず一通り島の内部を調べてみることにした。すると、まさにそこは、私たちが第一日目に見た光景とまるっきり同じだったのだった。しかし、その間、人っ子一人見かけない。おかしい。

そして、島の回りを調べつくすと、未だにひっそりとしているパンデモニウムホテルに入り、まず最初に、踊る幽霊を見た1階の部屋へとかけ足で向かった。

すると、その1階の端には、薄いセロファンの様な光沢のあるものが、カーテンの様に束ねて片付けられていた。そしてその横には、何やら隠される様にプロジェクターらしきもの、そしてその向かいには、周りの建築とは違った“やけに”平らな壁があったのだった。

私は得意気に、鼻をならしてみせた。

「ふんっ!ほら、私の言った通りだろう」

「・・・うむむむむっ!3Dのトリックが!“普通”でも、ムロダさんは、恐るべき人っすねぇ!私は、完敗っす!」

「・・・まあ、良いさ。それにしても、人の居ない様子は、澄香島と同じだな。これじゃあ、人間消失の件が、振り出しに戻ってしまったと言っても良い」

「そうっすねぇぇ、皆さん、本当に、何処に言ってしまったんでしょうねぇ??謎っす!」

島を探しつくしたところで、やはり人の姿は、澄香島同様に、影も形も見えはしなった。はっきり言って、言い知れぬ不安が胸の中を支配していた。すると、私の不安を急かす様に、床の部分に視線を向けると、そこには、見慣れたくもない赤黒いモノが点々と付着していた。

「・・・ちょっと待てよ。なんだこの赤黒いのは?」

私は、床にぽつりぽつりと残された赤黒い液体が乾いた様なモノに手を伸ばしてみた。

その物体に、シクラがクンクンと鼻を近づける。

「うーん、これは、血っすねぇ!!」

「・・・何!?」

「この鉄の様な匂い、そして、この赤黒さ!ヘモグロビン沢山の血ですよ!」

「そんなっ!・・・誰かが血を流すような怪我でもしているって言うのか!?」

私は、そう言うとすぐに、血が点々とこびり付いている床を辿って奥の部屋へと辿り着いた。すると、そこには、

「これはぁぁぁ!!!」

「・・・なんてこった」

私とシクラは、あまりの驚きの光景に口をあけずには居られなかった。

「死んでますよねぇ~?」

「・・・そうみたいだな」

「皆逃げてたんですかねぇ」

シクラが言う様に、そこには、包丁を手にして、部屋全体に逃げ惑った様に3人が、背中から血を流して、バラバラの位置で息絶えている姿だった。犯人から逃げようとしたのか?
# by hat__trick | 2005-03-31 02:50 | 事件
ファイルNo.0136「清香島」・真の解決編
ファイルNo.0136「清香島」・解決編終幕そして、驚愕の事件編

             『ファイルNo.0136「清香島」・真の解決編』

「これって、自給自足していたヒラタって言う人と、タカハシって言う人と、ナオコって人じゃないですか?背格好が似てるし、この前外で見かけた時と同じ服ですしね。でも、こりゃまたどうして、この人たち3人、背中を刺されて、死んじゃってるんですかねぇ~?」

シクラが、それぞれの遺体のところに駆け寄ると、次々に顔と服の特徴を確認していく。

「・・・背中を刺されて殺されている3つの遺体、そして、振り出しに戻った、人間消失事件か」

「そうですよ!ってそれにしても、何故だか、この3人の顔を見ていると懐かしい気分になってくるんですけれど、ムロダさんはこの3人の顔に見覚えはありませんかね?」

「・・・見覚え?・・・どれどれ」

私は、正直シクラの様に遺体を見るのを好む人間ではないので、顔を引きつらせながら今は死んでしまった3人の顔を確認してみた。

すると、見る見るうちに自分の顔が前以上に、引きつっていくのを感じる。
そして、一気に驚愕の事実を口に出す。

「・・・あっ!この3人!東京でテロ攻撃やった逃走中の奴らだよ!」

「・・・あぁぁぁ!!あの3人ですか!どうにも見覚えがあると思いましたよぅ!警察のポスターで何年も張り出されている常連さんですもんねぇ!!こんなところで拝めるなんて!変に嬉しい感じ!」

「喜んでどうするんだ。しかし、と言うことは何?まさか、幽霊事件と人間消失事件は、この3人が?・・・そうか!」

「えぇぇぇ!!何で、そんなことに!」

シクラが、今日何度目か分からない絶叫の声を上げるが、私はそれに構わずに、考えを整理し始める。

「・・・よく思い出してみると辻褄があってくる。私たちは、この3人以外の島の人間を “まともに見ていない”し、尚且つ、この3人とですら、 “まともに話をしていない”。唯一私たちと接触したアルバイトの連中や、船舶航海士は、パンデモニウムの暗闇や、目深に被った帽子やサングラスのせいで、殆ど印象に残っていない。船もあったし、ヘリコプターも、今はヘリポートにある。両方とも、つい最近2度以上動かされた様子がない。燃料の減り具合を見れば一目瞭然だからね。これじゃあ、この島から人間は消えようがない。それなのに、この3人以外の全ての人間が、忽然と消えてしまっている」

「それじゃあ、消えた島の人は、全員、この3人がやっていたんですかぁ?!」

「その通りだ。少なくとも、アルバイトは、このうちの誰かと見て良い。一昨日夕食に出たステーキの板を持ってくる時に、バイトが焼けどをするのを見たからね。ほら、この通り、こんなところに焼けどの跡が」

私は、ヒラタの指先を引き剥がす様に持ち上げると、白く水ぶくれ一歩手前の様な部分を指差した。

「人間消失は、この3人がぁ・・・。フシギさんも、コックさんも?この中の誰かがやったんですかぁ?」

「・・・そう言うことになるな。船舶航海士のフシギ、そして、料理を作ったコックタナベもこの3人の誰かがやったんだろう。フシギの方は、顔こそ良く覚えてないが、日の強い日中にサングラスを長時間かけていたら、薄っすらとでも日焼け跡でも残るだろう?実際、この遺体には、サングラスをかけていた様な日焼け跡があるし。他の人間は、この館の大きさに見合うだけの人数を、とりあえず適当に見繕って作ったんだろう。・・・普通、隠してまで、一人二役なんてしないだろう?」

「まさか、そんなことがっ!・・・でも確かに、全員に会ったわけでもないですし、元より、この話を聞いたのは、アルバイト君のフジワラ君でしたしねぇ。彼確かに、25にしては、“じじ臭かった”ですねぇ、話し方とか。よく覚えてませんけど、こんな風な顔をしていた様な気がしますよぅ。今頃気付いたですけど」

「君は、常に気付くのが遅すぎるんだよ。だから私が、何時もこんな目に遭うんだ」

私は、目の前がくるくる回っている様な感覚を感じて、目頭を揉み解してみる。

しかし、その間も、シクラの謎は尽きることがない様だ。

「でも、その三人が、何故そんな事を!?」

「・・・私たちを驚かせて、幽霊館や人間消失の噂を広げて、あまり観光客を来させない様にしかたかったのは、多分この3人だから、私たちを呼んだのは、この3人に違いないとは思うな。自給自足とは言え、小金が必要なことには違いない。だから、偽のオーナー夫婦まで作って、ホテルを開業したんだろう。・・・が、最近はやたらと有名になりすぎて、観光客が来すぎてしまっていたみたいだから、彼らなりにこの状況に危機感を覚えていたんだろう。幽霊と豪商の呪いでも掛け合わせれば、これ以上の“現実度”はないだろうから、幽霊の顔を写真と同じにしたんだろうし。しかし、こんなにこってることをした当の3人達が殺されて死んでしまうなんて・・・。一体どうしてだ?」

「・・・“一体どうしてだ?”だなんて、何だか、犯人は分かっている様な口ぶりですね?ねぇ??ムロダさぁん!」

「・・・うん?犯人だって?犯人は、決まっているさ。“この3人”以外に考えられないだろう?さっき言ったじゃないか、“この島から、人間は消えようがない”って。入ることは可能でも、“消えること”は不可能だった」

「えぇぇぇぇ!!??また、そんな大変なことをサラりと爽やかに言ってしまうだなんてっ!ムロダさん、滅茶苦茶過ぎますよぅ!」

「・・・何言ってるんだ?この島に彼ら3人以外に誰も居ないんだから、この三人が犯人なのさ。船にしたって、私たちの船くらいしか座礁した様子もないし、ヘリにしたって、あのヘリポートに今あるヘリが動く以外に、他のヘリは、一切離着陸も出来ない状態だったじゃないか。この島は、巨大な密室だった。だとしたら、中の奴らを疑うのは、普通のことだろ?」

「うぅぅぅ。それじゃあ、互いに互いの背中を刺しあったって言うことですかぁ?」

「そう言うこと。3人は何故だか、互いの背中を斬りつけ合ったのさ。それも順番順番に。そうじゃなければ、一人くらいは、正面に傷を負ってもいいはずなのに、その痕跡は一切ない。この3人の中の誰かが犯人で、その犯人が被害者に襲い掛かったとしたら、犯人に対して被害者による正当防衛による傷があるはずだから、少しくらいは傷は正面に出来てもいいはずだからね。まあ、この三人が殺しあったかは、3人の包丁にこびり付いた血をDNA検査にでもかければ直ぐに分かることさ。しかし、やり方は分かっても、動機が分からないんじゃなぁ。不十分だなぁ。なんで、この3人は、殺しあったんだ?」

「うぅぅぅ!そんなクソ難しいことが分かるなんて、ムロダさん“普通”じゃないっす!けれども、動機の方は分からないみたいですねぇ!でも、ご安心っ!動機は十分ですよぅ!何故なら、幽霊のせいですからぁ!」

「・・・なんだい、それ」

「多分、噂話の家族を切り殺した豪商の怨霊かなんかの祟りですよぅ!だって、殺され方が、刺殺なんですよぅ!豪商が家族の人たちを殺した方法で、互いに互いを刺しあったに違いありませんよぅ!一応、家族みたいなもんだでしょうからね、一緒に逃亡生活をしていたんだったら!」

「・・・幽霊ね・・・。そんな事を信じるわけにはいかないけど、まあこの際、動機なんてどうでも良いんだ。そんなのを決めるのは、警察の役目さ。兎に角、この件は、これで終わったみたいだ。とっとと、本島に帰って、警察にでも連絡しよう。生憎、携帯なんてものを持ってなかったし、このホテルの電話は使い物にならなかったから連絡出来なかったけれど、殺人事件が発生していたことだしね」

そう言うと私は、日が傾きかけた空を見やると、急いで船の繋いでいる港へと足を向けた。

何故だか妙に、体が重く感じられる気がする。とても長い3日間だった。



「清香島で、そんなことがねぇ。しかし、偶然もあったもんですな。例の3人組が装った人間が、例の一族の構成と同じだったなんて・・・。もしかしたら、そのせいで、豪商の眠りを呼び覚ましてしまったのでしょうかねぇ。刑事のくせにこんなことを言うなんて、変に思うかもしれませんが、小さい頃から、清香島の恐ろしい話を聞いて育ったもんですから、ついつい。それに澄香島と清香島の建物についても、あれは、その豪商が作ったと言う話ですよ、それも、小さい頃からよく聞かされたもんです。・・・あぁ、すみませんでした、長々と私の話なんかを。それじゃあ、貴方一人だけなんですね?清香島から帰ってこられたのは?」

「まあ、そうですね。最初に清香島に居たのが、私を含め4人。そのうち3人は、清香島で、殺しあって死んでしまいましたから。とりあえず、私は、亡霊とやらに勘違いされなくてよかったと言うところでしょう」

「まあ、いずれにしろご無事で何よりです。どうやら清香島の例の遺体が持っていた包丁の血液はそれぞれの血液だったことも、DNA鑑定で分かりましたし。何より、貴方が清香島に戻ってくる1日前には、どうやら死亡していた様ですから、後でまた話を伺うこともるかと思いますが、貴方の方への事情聴取は、これで一旦終わりと言うことになると思います。長い間、ご苦労様でした」

クロダという刑事は、そう言う風に言うと、狭い部屋から出て行った。
部屋には、窓がポツンと一つだけある。この部屋は、取調室と言うやつなのかもしれない。
狭い部屋には、私のためのお茶が1つだけ出されていた。

「酷いなぁ!私のことは無視してくれちゃってぇい!清香島から帰ってきたのは、ムロダさんだけじゃないのにぃ!」

刑事が外に出るのを見計らってシクラが、怒りの声を上げた。

「・・・しょうがないだろう。君のことは、私にしか分からないんだし」

「ううう!これだから、私の役回りは、損ばっかりですよう!」

「・・そんなこと言わないでくれ。君のために、似合わない服まで着てやっているし、沈黙も最小限に留めているのにさ。“・”なし大変なの、分かってる?」

「そうでした!それじゃあ私、今度は、ピラピラなスカートをはきたいんですけども!そんでもってムロダさん沈黙しちゃっていいですよぅ!」

「・・・・・それだけは、止めてくれ・・・。もう、今年で24になるし、君を野晴らしにしたら・・・」

「沈黙しちゃって良いんですってばっ!それに、何言っているんですかぁ!何時になっても、オトメ心を忘れちゃ敗者ですよぅ!さあ、お店に行きましょう!ピラピラっす!最高なんですから、今年のピラピラスカート!」

こうして私とシクラの、奇妙な清香島での事件は、ピラピラのスカートをはくと言うことで、おわりを告げたのであった。ある意味、そちらの方が、私にとっては、悪夢みたいなもんだったな。本当に。


私の仕事は“普通”の調査員。依頼がある際は、是非ともお電話を。私とシクラが貴方の事件を調査いたします。“ハッピーエンド”とは、断言できないけど。


**********第2回上清水賞テンプレ**********
【ルール】
 2人1組で参加する覆面ブロガー同士の、ミステリィ創作作品によるタッグ戦(ダブルス)です。

  参加の流れは、以下の通り。

  1・一緒に参加するパートナーを探す
  2・トラバ作品の導入部(事件編)を受け持つか、解決編を受け持つか
   、2人で相談して担当を決める
  3・前半部担当者が、この記事にトラックバックする
  4・後半部担当者が、前半部の記事に解決編をトラックバックする

1人目は上清水から出されたお題を踏まえて、舞台となる清香島で
事件を発生させて(謎を提示して)ください。
2人目は、その事件の解決部分を書いてください。
前回と違い、前半部が出揃ってから後半部がスタートするシステムではなく、
エントリー期限中に両方ともTBを完了させてください。
前半・後半の同時TBももちろんOK。

なお、ご参加の際にはタッグチーム名も用意していただければ幸いです。
 
 エントリー期限は本日から3月31日(木曜日)23:59までです。
 
 【審査方法】
 ●巨匠・上清水一三六が自ら最優秀作品を選出。
    その他、場合によっては部門賞もあり。
 
 ●参加条件はすべての覆面ブロガーによるチーム。

  「覆面ブログ」の定義は、通常メーンで記事を書いているブログ以外
のブログ。
そして、書いている人間の正体が通常ブログと同一人物であることが
〝バレていない〟と自分で確信していることです。自分でバレていないと
信じていれば、実際にはバレバレでもかまいません(笑)。

  TB人数制限はありません。原則として1チーム1TBですが、パートナーが
異なる場合には別チームとみなしますので、相手を替えれば何作品でも
TB可能です。また、覆面さえ別のものに着け替えれば、中の人同士が
同じ組み合わせでもかまいません。

 ※誰でも参加出来るようにこのテンプレを記事の最後にコピペお願いします。

 ★会場   激短ミステリィ    
 http://osarudon1.exblog.jp

**********第2回上清水賞テンプレ**********

今まで非公開だった、慟哭を、ここに再現っす。(ぇ)


『ども、シクラっす。実は、この清香島の事件が終わった後、私とムロダさんは、色々と調べていたことがあるんですよぅ。それはズバリ、今回の被害者であり加害者である3人の、ある病気の『通院歴』ってやつっす。私は、幽霊のせいでも良いと思うんですけどぅ、ムロダさんは、やっぱり納得いかなかったみたいで、“動機が分からない”理由を探すために、3人の『病歴』を調べていたんっす。まあ、何故病気をはじめに疑ったのかなんて、私には知る由もないっすけど。けど、実際調べてみると彼らには、別々の病院での通院歴があったんす。ずばり、“夢遊病”これは、あれっすねぇ、寝ている間に、動き回るってやつですよぅ!つまり、彼らは、“寝ている間”に“殺しあった”ってことですねぇ。これは、幽霊よりも驚きっすけど、でも、実際、“夢遊病患者”が殺人を起こすケースっていうのは、アメリカって国で発見されているらしいんすよ。ずばり、寝ている間に、“妻を殺してしまった”って言うケースが。44回も、妻のことめった刺し・・・。その審議は、定かじゃないですけどぅ、一概に、寝ている人間が、人を殺すことが“ありえない”だなんて言えないんだそうですよぅ。そもそも、逃亡者が、“逃げにくい”島に篭るところからして、オカシイですからね、若しかしたら、夢遊病で町を歩き回っているところを警察に発見されるのを恐れて、こんな島にやってきたのかもしれないって、ムロダさんは言うですけどぅ・・・。私は、幽霊の線を全身全霊で支持しますよぅ!さもなきゃ、自分も寝ている時に、人を殺す可能性がありそうで怖いじゃないですかぁ!!ああ、怖っ!でも、そんなことムロダさんには言えないし・・・。そんなわけなので、ムロダさんには内緒で、反転で書き込んじゃいましたぁ!ムロダさんは、只今睡眠中ですからね!・・・これが、もしや夢遊病・・・!?・・・ちょっと汗流れてきましたけど、くれぐれも、他の人に、反転のことは言っちゃあ駄目ですよぅ!さもなければ・・・、ピラピラスカートがぁ!皆さんのご協力を要求しますっ!』
# by hat__trick | 2005-03-31 02:40 | 事件