ファイルNo.0136「清香島」・事件編の方をお先にお読み下さいっす。さもないと、わけわかめっす。
それでは、ジュブナイル小説もどき、だけれど、PG13。
出てくる名前、建物、全て架空のフィクション文章っすから、本気にしないで下さい。では、始まりー。
私は、シクラが身悶えている横で、ぼんやりと、これはどう言うことなのか考えてしまった。
しかし、身悶えしている“だけ”かと思ったシクラも、実は、考えていたらしい。
「人間消失ですよぅ~!みーんなどこに消えちゃったんですかねぇ!もしかして、天国ですかぁ!それとも、パンデモニウムって言うくらいですから、地獄とかぁ~!」
これもまた、とっても嬉しそうだ。
私とシクラを除く他の人々、つまり、島内の全ての人々は、一体何処に消えてしまったのか?シクラの言うとおりに、ホテルに名づけられた、このパンデモニウムと言う言葉は、ギリシア語で『デーモンの全て』と言う意味を表す言葉に由来するラテン語だ。デーモンとやらに食い殺されたといわれても、何だか、納得出来てしまう様な異様な名前であることは確かだった。
「・・兎に角、君と私で出来ることをしよう」
私は、未だに嬉しそうに身悶えしているシクラの肩に手を置いて落ち着かせようとした。
「はいぃぃ!!ムロダさぁん!そうしましょう!」
やけに和やかな笑顔をくれてくれる。シクラには、嬉しいことばかりの連続の旅らしいが、私は災難続きだ。着てきた服は似合わないし、私たち以外の人々は、消えて居なくなるし。これは、シクラに運を全て持っていかれているとしか思えない。今度からは、是非とも別行動したいものだ・・・。・・・いや、それは出来ないか・・・。シクラの面倒を見る者が居ないと、世界が破滅しかねない。これは、存亡の危機と言うやつだ。それはいけない。
私は、重くなった頭を1回振ると、シクラと共に、もう一度だけ島の中を見て回ることにした。
以下が調査結果である。
★やはり、人っ子一人居ない。今現在、島に居るのは、私とシクラのみである。
「あはははっ!!やっぱり、私たちだけでしたねぇ~!人間消失だぁ!!やったぁ!!」
「・・・何がやったなんだ?まあ、良い。これも楽しいアトラクションの一部だと思えば、楽しい春の思い出になるしね」
「そうですよぅ~!ムロダさんなら、直ぐに、この謎を解いてくれますしねぇ~!期待しちゃいますよぅ~!」
「・・直ぐにねぇ・・・」
私は、少し頭を抱え込んでいたのだが、とりあえずそんな雰囲気は微塵も見せずに、シクラの言葉に相槌を打っておいた。
シクラは、探偵を気取っているのか、部屋の回りをグルグルと回りながら、人差し指で顎の部分をポンポンと叩き始めると、何やら考え始めた様だ。
「まず最初にですねぇ~、人間消失と、踊る幽霊が関係あるかってことですようねぇ~」
「・・・現時点じゃ、何も言えないから、それは保留」
「早速ですかぁ!」
「・・・・仕方ないだろ、こっちには、何のバックグラウンドもないんだからね。昨日の今日で、全ての裏事情知ってるのは、“出来すぎた”探偵くらいだよ」
「はぁ~、そうですかぁ~?ムロダさんも、そんな“出来すぎた”探偵だったら、解決も早かったんですかねぇ~?」
「・そりゃそうだ。瞬殺に決まってる。けど生憎私は、“普通”だからね。残念?」
「いえいえ~!いくら“普通”でも、私は、“ムロダさんだから”、一緒に何時も居るんじゃないですかぁ~!ムロダさんのお陰で、何度命を救われたかぁ~、正直数えられないですものぅ~!」
「・・・その代わり、私も十分に死にかけたけどね・・・。まあ、その話は、また後ですることにして、最初は、踊る幽霊のことに焦点を合わそう」
「はいぃぃぃ!」
シクラは、手をピシッと打ち上げた。
「・・・まず、踊る幽霊の件から。最初に、踊る幽霊の存在を信じるか?これは、重要」
「うーん、難しいぃぃ!究極の2択ってやつですねぇ~!それじゃあ、信じるに、全身全霊ぃぃぃ!!」
「私は、信じないよ」
「あれぇぇぇぇ!!それだったら、最初から聞かないで下さいよっ!」
「・・聞くことが重要なのさ。答えは、重要じゃない。兎に角私は、躍る幽霊の存在は信じない。だから、幽霊は誰か、“生きている人間”がやったに違いないと考えてる」
「はいぃぃぃ・・・、それでムロダさん的には、どんな感じで、あの踊る幽霊を作ったと考えてるんですかぁ~?」
考えは、未だに煮え切らないのだが、この際出し渋っても仕方ない。
あまりにも選択肢が無さ過ぎる。次々に口に出していかないと、何故だか話が進まない気がするのだ。
私は、一口空気を吸い込むと、考えを口に出す。
「3D」
「えぇぇぇぇ!?3Dっすか!?」
「・・・何か不満でも?」
「3Dって、立体に映像が見えるやつですよねぇ!この前ユニバーサルスタジオに行って、楽し
んだ、あれですよねぇ?・・・不満なんてないですけどねぇ。ただ、そんなんじゃ、直ぐにバレちゃわないですかぁ~?だって、3Dって、メガネっぽいのかけないと、その効果が出ないじゃないですかぁ!幽霊を見た時、そんなのムロダさんも、私もかけてなかったですよぅ!ムロダさんがいくら“普通”の人でも、それはないですよぅ~!」
「メガネをかけなくても、巨大なフィルターが目の前に広げられていたら同じだろ。君と私が、あの幽霊を見たのは勿論、夜。このパンデモニウムは、“やけに”薄暗かったし、尚且つ、君と私が幽霊とやらを見たのは、2階からだった。私たちは、幽霊を見てすぐ、1階に行こうとしたけれど、何故だか私たちの居た2階から、簡単に1階に降りることが“出来なかった”からね。黒いフィルターがあるかないかなんて、分からないじゃないか」
「うぅぅぅぅーん」
シクラは、これ以上に困惑出来ないくらいの困惑顔になると、眉間に皺を寄せてもがき苦しんでいる様だ。とことん、忙しい奴。
「それじゃぁぁぁ、ムロダさんは、犯人が、その3Dとやらを使って、私たちに幽霊が踊っているかの様に見せたと言いたいんですかぁ~?」
「その通り。犯人は、プロジェクターか何かをフィルターの前に設置して、映像を壁か何かに映し出し、その映し出された映像を、君と私が、巨大なフィルターを通して見た。そして、その立体的な画像を見て、私たちが“本物”の幽霊だと思うと思ったんだろうな」
「なるほど!ムロダさん、“普通”の人なのに、凄いこと考えますねぇぇ!いよぅ、ムロダさんっ!尊敬ぃ!」
しかし、興奮しきったシクラには悪いのだが、私は、残念なことを言わなければならない。
「・・・と思ったんだけど、どうやら、その線は、難しいみたいなんだよな」
「えぇぇぇぇ!!!ここに来てですかぁぁぁ!?今までのは、一体何だったんですかぁ!?」
もうないだろうと思った驚きが、もう1度奇襲してやってきたので、更に驚きの声を上げるシクラ。この位驚いてくれると、何故だか、すがすがしさすら感じてくるから不思議だ。
私は、ポキポキと指を鳴らすと、もう一度頭の中の情報を整理しようとした。
「・・・さっき言った様に、夜の時点ではとてもじゃないけれど、1階に下りるのは難しかった。階段もすぐ近くにあるわけでもなかったし、とても薄暗かったし、それになにより、直ぐにでも駆けつけなきゃならない衝動にもかられなかった、何故だかあの時、むしょうに眠気が押し寄せてきて、体が重く感じたんだよな。まったく、早起きはするもんじゃないね。遅寝遅起きが私には、一番だって思うよ」
私がしみじみと感想を漏らすと、シクラも、
「・・・そうなんですよねぇ。私も見た時は、ドキドキして今直ぐにでも駆けつけたい気持ちだったんですけどねぇ、何故だか、むしょうに眠かったですよねぇ。幽霊消えたら、ベッドに直行して、即行寝ちまいましたもんねっ!常日頃の夜更かしの賜物ぅ!」
「そうそう。それだから、今日改めて、その1階の部分に行ってみたけど、それらしい仕掛けも、それを片付けた後も、一切ない。床には、しっかり均等に埃が被ってたからさ。どうしたもんかなーっと」
「でも変ですよねぇ。仮にもホテルなのに、床に埃だなんてぇ~、綺麗にしてないんですかねぇ~。このホテルは、怠慢さんなんですかぁぁ!?」
今度は、“プンプン”と言う言葉が相応しい様にシクラは、口をへの字にしている様。可愛いって言ったら、可愛いのかもしれないけれど、私には、似合わないな。
「・・・怠慢か否かは後で決めるとして、これじゃあ、この幽霊の件も保留だなー」
「うむむむむむー!!それじゃあ!!ムロダさんが踊る幽霊見た時に、“止まったらまずい”って言ってましたけどぅ、それは何故なんですかぁぁ!私、気になって眠れなかったんですよぅ!」
「嘘付け。さっき、君、即行寝たって言ってただろう」
「・・・あははは。そこは、ご愛嬌ですよぅ!それで、そこの辺りはどうなんですかぁ!」
舌をペロりと出すと、シクラは、上目使いをする。懇願する様な眼差しと言うやつか。正直、シクラの上目使いは似合っていないので、すぐにでも止めて欲しくて、すぐさま応えることにした。
「動いた方が、“それっぽい”し、“すぐに”分かるじゃないか。ただでさえ、薄暗いからね、ただぼんやりと現れたって、見過ごされる危険もあるしさ。“踊る”って言う修飾語があった方が、記憶にも残りやすいし、それか、踊っている方が、曰くありげな感じがするってのもあるな」
「・・・それだけですかぁぁ!?」
「・・・ああ、それだけさ。何を期待してるんだ君は。小説なんかみたいな“衝撃的”な理由でもあるとでも思ったの?だとしたら、小説の読みすぎだよ。もう少し、現実世界に戻ってきた方がいいかもね。そう言う風に回りくどいことばかり考えるから、簡単なことにも気付かないで、とても単純な事実すらも、『謎だ!!!事件だ!!!密室だ!!!消失だ!!!不可能犯罪だ!!』なんて騒ぎ立てる輩が出てくるんだから。現実は、思うより単純なものだってことだね」
「・・・ははは・・・。ムロダさん、やけに挑発的な発言ですねぇ!!探偵さん達とか、ミステリファン達に、そのうち、殺されちゃいますよぅぅぅ!」
「大丈夫、その時は君も一緒だからね」
「・・・なんでですか!!死ぬなら、一人で死んでくださいよぅ!道連れ反対!」
「・・・まあ、冗談はさておき、踊る幽霊の件が行き詰った以上、次の件にいこう」
「・・・まったく、どこまで冗談なのか分かりませんけどぅ、次の件にいくのは賛成ですよぅ!次こそ、きちんと解決してくれるんですよねぇぇぇ、ムロダさんっ!!」
「人任せにしないで、君も勿論、考えてくれ。時々君の“ドキリ”とした一言が、私の発想にアイディアをブチ込んでくれることもあるからさ」
「本当ですか!?うむむむ、それじゃあ、頑張らないといけないですねぇ!それじゃあ、私も、ムロダさんに微力ながらお力をお貸ししますともぅ!」
フンと鼻息荒くヤル気満々のシクラは、次々に考えを提供していく。
勿論殆どは、一見役に立たないクズ情報や考えばかりだ。
例えば、兎に角、ここは良い所だの、コックのタナベが作った夕食は、自分の舌には合わないだの、極めつけは、トムソーヤになった気分だののだ。
「・・・それだけかな?君の言いたいことは?」
私は、シクラがとりあえず全部言い切ったところで、目元に血管を浮き立たせながら、これでも冷静に、満足げなシクラに質問してみた。
「いえいえっ!まだまだありますともっ!これでもまだ、10分の1くらいしか言ってませんっ!」
「!?」
「えっとーですねぇ~」
「・・・ま、ま、待て。まだ何かあるのか?」
怒りを通り越して、何故だか、疲れを感じる。私は、何か激しい運動をしている錯覚を感じてしまったので、更に口をあけようとしたシクラに待ったをかけ様とするも時既に遅し。
「はいっ!まだムロダさんの推理のために提供出来る情報は、沢山ありますよぅ!安心して下さいっ!!例えば、玄関から日の出が見えるっす!」
「!?」
「変なんですよねぇ~、昨日清香島に来た時は、確か玄関側で日の入りを見たと思ったんですけれどぅ、今日は、何故だか玄関から日が上がっているみたいですしー。どうなってるんでしょう?」
「・・・今から、それ、確認しに行こう」
「えぇぇぇ!?今からですか!?もう、外真っ暗ですよぅ!」
シクラが言う様に、外は真っ暗闇の夜となっていた。島内を2回も見回っていたら、1日と言う時間は、簡単に飛んで言ってしまったのだ。私が、腕の時計を見ると、今の時間は、夜の8時だった。
この一連の奇怪な事件について話し合っていたシクラと私は、パンデモニウムで割り当てられた部屋から、部屋に備え付けて合ったライトを持って、真っ暗闇の中へと駆け出していた。
「館の裏に背中を向けて、右に改築中の一棟。そして、左に3人の男女が住んでいる一棟だったよね?」
「はい、そうっすよう!昨日、一生懸命調査したですもんねぇ!」
「・・・うーん」
「そして、館の裏から、一直線上に穢香島(あいかじま)っすよね。事前の調査によると、穢香島は無人の島で、かれこれ50年ほど、公式的には、誰もあの島には行ってない様ですよぅ。よっぽど変な事件でもあったんですかねぇ?皆行きたがらないなんてぇ。私だったら、即行駆けつけちゃうのにっ!」
「・・・君ならそうかもね・・・。疑いようがないよ。しかし、昨日の調査通りの配置だな、全て・・・」
私は、ひとつため息をつくと、更にシクラに話を聞いてみることにした。
「他に気付いたことは?」
「うーんと、ご飯が好みじゃなかったのと、日の入りの位置が違うのと、他にはー、寝ている間に
どうやら、何処かに体を打ちつけたみたいで、青タンが出来てたみたいですっ!今頃気付きました!めちゃ痛めですっ!」
そう言うとシクラは、腕の裏側と足の裏側を見せた。 見事な青タンが薄っすらと白い肌に出来上がっていた。
そしてどうやら、私もシクラ同様に体を調べてみると同じところに、青タンが出来ている様だった。気付いてみると、ヒリヒリと痛い感じがしてくる。シクラと同じ様に体に青タンか・・・。
しかし、私が自分の体のことを気にしていると、突然、
「・・・実は、お尻の方も微妙に痛いんですよぅ!ムロダさん見てくださいぃ!」
と叫ぶと、シクラはパンツを脱ごうとしているじゃないか!私は、慣れて居るとは言え、突然のシクラの奇行に心拍数が一気に上がってしまった。
「・・・おいおい!そんなのこと出来るかぁ!もう少し恥じらいってもんを身に着けてくれ!」
私は、もう少しでパンツを下げるところのシクラの手を押しとどめると、心拍数を元に戻すために、深く息を吸い込んだ。こんなことが続いたら、きっと何時か、シクラの奇行で死ぬ日も近いんじゃないかと思い始めてくる。
シクラのおもりは、簡単にはいかないことを改めて実感する。どうにかならないかな、これ。
私がそんなことを考えながら、深呼吸をしている間、シクラは一言も発しなかった。そんなに晒したかったのだろうか?こっちは、そんなの望んじゃいないが。
何度か深呼吸をすると、通常時の心拍数に落ち着いたので、固まりつつある考えを整理し、ある疑問をシクラにしてみることにした。
「・・・青タンのことは、興味深いことは確かだけど、ちょっと置いといて・・・。穢香島と清香島って言うのは、同じ形をしてるの?」
「えーっと、まさかムロダさん穢香島と清香島が入れ替わっているとか言い出すんじゃないでしょうねぇ!“普通”のムロダさんでも、まさか、そんなことをっ!!」
さっきまでの奇行のことを一切忘れてしまったのか、私の疑問の声を遮る様に声を張り上げるシクラ。どこからそんな力が出てくるのか、こっちの方が謎。
「・・・どうなの?」
私は、目元に筋を浮かせながら続ける。
「・・・図星ってやつですかぁぁ!でも、残念でしたっ!穢香島は、清香島に似ても似つかない四角っぽい島なんですよぅ!もう、“これでもか!”って勢いで四角なんです!いよぅ!自然の驚異ぃぃ!神さん、よくやりましたっ!」
シクラは得意気に胸元から、事前に行った調査を詳細に記した手帳を取り出し、私の考えていた考えを一気に打ち砕いた。
まあ、常にシクラはこんな感じなのだけれど。折角考えていたことを瞬殺された今回ばかりは、ムカっ腹かな。
「・・・黙ってくれる?ちょっと耳に響くから。・・・まあ、君の言う様に、本当に四角なら、この島を歩き回って居る時にでも気付くはずか・・・。でもな・・・。合っていると思ったんだけど・・・」
こう言う混乱している時にこそ、冷静になって考えをまとめる必要がある。
私は、もう1回だけ頭を振ると、今まで分かっていることを確認してみることにした。
「まず、踊る幽霊の件だけど、未だに謎だな。道具を使った様子が微塵もないし」
「それじゃあ、本当に幽霊だったんですよぅ!ムロダさんも、幽霊の存在を信じましょう!」
「・・・誤解してもらっちゃ困るよ。幽霊の存在を信じないとは、私は一言も言っちゃいないだろ。ただ、今回の“踊る幽霊”ってやつを信じてないのさ」
「はあぁぁ。それじゃあ、その踊る幽霊の存在を信じましょう!」
「いや、あれは絶対作りもんさ」
「また、何を根拠にっ!」
「勘さ。それ以上でも、それ以下でもないな」
「出たっ!ズバリ“勘”!」
「・・・兎に角、君が何と言おうと、勘さ。経験を基にしたね。ただ、トリックはなんとなく分かっても、その証拠がないから、勘としかいい様がないだけの話さ。まあ、幽霊の件は、そこまで拘泥しなければならない話でもないだろうから、次の件。人間消失の件だな」
私たちは、暗い館の裏から館の中へと帰りながら、考えを整理始めた。
「君の言うことが正しければ、こうだな」
今分かっている事実
★昨日と今日で、日の入りを見た方向がどうやら違う
★踊る幽霊を見た1階の部分には、何かを移動した様子や、何かが隠されている様子がない。床は、埃が薄っすらと覆っている
★清香島の近くには、穢香島と言う名の島がある。しかし、その島の形は、清香島の様な丸いものではなく、四角い形をしている
★体中に青タンが出来ている。シクラのお尻にも、どうやら青タンが出来ている様子
★昨日の夕飯の飯の味が、シクラの好みではなかった
★シクラは、只今トムソーヤ気分
「・・・こんな感じかな」
「そうっすねっ!」
にっこりと笑顔を作ると、シクラは、嬉しそうにもう一度、身悶えた。
何故だか、気持ち悪い。
私は気を取り直し、現時点で分かっていることを、紙に書き起こした紙をじっくりと見直した。後ろの方になってくればなるほど、どうでもいい様な感じがしてくるが、その点は、とりあえず無視しておくこととした。
私は、自分の目で、この島の位置関係を知るために、シクラに地図の有無をたずねてみた。
「ところで、君は、ここら辺の地図を持っていたりするのかな?」
「・・・あ、勿論ですともぅ!それは、調査には、必衰アイテムっすからねぇ!」
シクラは、ガサゴソと床の上に放置されていたカバンの中身をかき回すと、ぐしゃぐしゃになった地図を取り出した。
「はい、これですねっ!」
これまた満面の笑みだ。しかし、私は持ち出された地図を見た瞬間に、体が硬直してしまった。
「これは・・・」
私が驚きの声を上げると、シクラは、何事か面白いことでも起こったのかと、うずうずと体をくねらせた。だから、それが気持ち悪いのに。
「ムロダさぁーん、何ですか!?何か、重要なことでも、分かってしまったのですかぁ!!」
シクラは、私のことなんかお構いなしに、体をくねらせる。
私は、短い髪をかきむしる程に動揺してしまい、一瞬我を忘れて、応えるのが少し遅れてしまった。 しかし、ぐちゃぐちゃになった頭の中を、すぐに切り替える。
「・・・ああ、十分すぎる程にねっ!」
私は、自分でも驚くほどに大きな声で叫んでしまう。けれど、今回ばかりは、そんなことには構っていられない。そしてシクラも、私の叫びに同調する様に、
「何ですってぇー!な、な、何なんですかぁ!!」
と絶叫する。咽喉の奥まで見えそうだ。
私は、未だに高鳴る鼓動で、
「・・・これを見てみろよ」
「・・・はい、見てみましたぁ!そんでもって、何も分かりませんっ!」
「・・・やけに早い回答だな。まあ、良い。この島だよ」
私は、左から清香島、穢香島、そして、2つの島の隣にぽちっとある島を指差した。
「ああ、このちっこい丸い島っすねぇ!」
「そうだ、この澄香島(ちょうかじま)だな」
「それがどうかしたんですか!」
「・・・こんなにヒントを言っているのに分からないの!?君は!」
「あは、すみませんっ、私“普通”以下なんでぇ!ムロダさんは、知って居るかと思ったんですけどねぇ」
「・・・ああ、十分に知っていたな・・・。ただちょっと忘れてただけだよ。兎に角、この澄香島を見てみてくれよ。この澄香島と清香島、形が同じじゃないか?」
「・・・えぇぇぇぇ!?また、なんてことをっ!確かに、形は同じですけど!」
「・・・この形と言い、まさに、澄香島は、清香島のミニチュアと言っても過言じゃない。そして、“まるで清香島の様に”私たちが今居るこの島は、丸い」
「・・・えぇぇぇ!?まさか、さっきの話ぶりかえして、この島、清香島じゃないとでも言いたいんですか!?・・・でも、それと人間消失事件と何の関係が?」
シクラは、もう“何でもこい”と言う様に、どっかりと部屋付属の椅子に座り込むと、私の発言を待った。
私も、シクラの様に居住まいを正し、どっかりと椅子に座り込む。
「・・・まさに消失したのは、私たち以外の人間ではなくて、“私たち自身”だったって言う簡単なことさ」
「!!!!???」
どうやら、シクラは混乱の極みにある様だ。